2020年1月16日、この日のライドの予定がなかった。
もともとは1月17日が堺シクロクロス予定でこの日は弁天の里にご飯かけ卵でも飲みに行こうかと考えていたのだけれど、
このご時世の影響で残念ながら中止(後日堺浜ラウンドに振り替え)となり、16日の予定がぽっかりと空いてしまった。
何をしようか、と考えてみたところ、パッと浮かんだのが
「エベレスティングでもやってみっか」であった。
明日エベレスってみるかなあ
— まさやん (@saibaiman1002) January 15, 2021
■エベレスティングについて簡単に
要は「エベレストの標高分だけ1回のライドで上れ!!」というもの。
その達成条件の中にはざっくり簡単に言えば下記のものがある。
・同じコースをひたすら往復せよ!(周回とか、いろんな場所で合計するのではない)
・コースの1回分の上りはきっちり下から上まで上れ!(途中で引き返したりする分は獲得に含めない)
・1回のライドでやれ!(だっせえRT走みたいに何日も分割すんじゃねえ)
・無事生きて帰れ!(家に帰るまでがエベレスティングです)
本当にざっくりではあるがこんな感じ。
■プランニングについて
2017年に大阪⇒東京キャノンボールを達成したことがある身として、
こういったチャレンジに対して必要な要素は主に3つだ。
①問題のないプランニングと準備
②当日の天候を選択・見極める能力
③それを実現する走力と体力
上記3つである。
割合にしてみると主観ではあるが①②で80%を占めると思う。③に関しては20%ほどの重要性だ。
そもそも実力がなければ①のプランニングの段階で破綻する。
達成できるプランニングができるという時点である程度の走力と体力はある前提であり、あくまでそのプラン通りに遂行する実力があるかどうかということである。
つまりは、準備段階、走り出す前に80%くらいの結果は出ているということだ。
天気は運ともいえるけれど、それはあくまで「絶対にこの日にチャレンジしなければならない」という場合であればそうといえる。
例えばヒルクライム「レース」の日であれば、絶対にその日でないと開催されないので雨が降れば雨に強い選手・弱い選手で差が出る。
これは運だ。
これは運だ。
但しキャノンボールやエベレスティング等のチャレンジは、日付の設定はいつだって自由だ。
だから設定する日は実力のうちと考える。
(たまたま隕石が降ってきたとか、たまたま途中で通行予定の道で事故が起こって通行止めとかになったなどはさすがに運であるとはいえるけれども)
幸いにも天気予報を見ると晴れ/曇りで気温も1月にしてはそこそこ高い(14度予報)。
絶好の機会ではないかと思って思い付きではあるが準備を進める。
【選択したコース】
自分はヒルクライムは決して遅い方ではないが所謂「激坂」には弱い
逆に緩斜面を淡々と踏み続けるのにはある程度自身がある
そんな自分にとっての理想は5㎞前後で250-300m程度獲得標高を稼げるコースだろうと考えた。
更に細分化すると、自分には下記条件が必要だった
・下りが無理なく安心して下ることができるコース
・自宅から10-15㎞程度の近さにあり、自走で簡単に行けて疲弊していても帰宅できる場所
・スタートorゴールにトイレがある
・屋根付きで休める場所がある
・スタートorゴールまたはその付近にコンビニか自販機がある
・電波が入る
そうやって考えたところ、いつもの定例コース「勝尾寺」が真っ先にヒットする。
コースは勝尾寺(西田橋-勝尾寺コース)に決定した。
【時間設定】
次に、大体どのくらいのペースで上って下ってを繰り返すことができるかを考える。
勝尾寺の「セグメント(認定はStravaセグメントで行われるらしい)」での獲得標高は239m。
合計で37回往復する必要がある。1本を6往復として、6本+1回で完了の見込みだ。
走行距離は1本約8.8㎞なので、合計で320㎞強となる。
勝尾寺の自己ベストは大体10分55秒。
但し当然こんなタイムは毎回出せるわけがない。
但し当然こんなタイムは毎回出せるわけがない。
普段無理しない程度に走って13分弱。会話できるくらいの強度でのんびり走れば15分弱くらいだ。
序盤は14分台が出ることもあるだろうけれど、後半17分台になることもあるだろうと考え、平均15分を設定。
下りは制限速度と車通りの関係もあるから8分として23分/1往復、1本は約130分+休憩20分で150分で計算する。
休憩20分は取りすぎの様に思うけれど、キャノンボールの時と違ってエベレスティングは断続的に踏む力が高い。
キャノンボールの時よりかは休憩が多めに必要だと考えた。
150分×6+最終の30分=15.5時間
全体を少しゆっくり目で考えると、多少ペースが予定より落ちたとしてこのくらいで完了できると予想。
日本記録のアーティファクト石井さんの記録から考えると2時間遅く14時間くらいで達成できるとは思うが、余裕をもってプランニングをした。
スタート時刻は朝の6時に1本目を予定。
20時-21時には終わる予定である。
20時-21時には終わる予定である。
■準備編
【機材】
機材はレース機材のCervelo R3 DISC
サドルはスぺシャのパワーサドルから、ASTUTEのSKYLITE VTに変更。ロングライドの時はポジションの余裕が結構後で効果が出る。
サドルバッグは取外し、ツールボトルに最低限を投入。あとは現地に食料と共にミニフロアポンプや予備チューブ・予備タイヤを確保する。
【服装】
服装はメリノインナーにRaphaのプロチームの「サーマルジャージ」「インサレーテッドジレ」「ビブショーツ」。
足下にはGARNEAUのポーラテックレッグウォーマーを装着。軽く、動きやすく、暖かい装備だ。
特にインサレーテッドジレはダブルジッパーになっており上り下りのところでの開放具合を調節しやすく便利。
そしてポーラテックレッグウォーマーは撥水性が高い上、よく伸びて膝の動きを妨げない。
長丁場は小さな我慢もストレスになる。細かいところにも配慮をしていく。
【補給と携行物】
食事プランについては、休憩の順に以下を考えた。
おにぎり・団子・パン
⇒団子・パン
⇒パン・羊羹
⇒パン・羊羹・サプリメント(電解質やマグネシウムなど)
⇒羊羹・ジェル
⇒ジェル
この順で初めのうちに腹にたまるものと高エネルギーのものを摂取していき、徐々に流し込むエネルギーだけのものに切り替えていく。
羊羹やジェルでは、定番のスポーツ羊羹、エネモチ、マグオン、パワーバーなどを選択。
サプリメントは疲労回復系のアミノ酸や、マグネシウムや電解質、硝酸塩、カフェインなどをパックに詰める。
あとは間食がてらにプロテインバーを背中に用意していく程度で、パンやおにぎりは当日に直前のマックスバリュで購入することにした。
さて、これで準備はOK。十分に睡眠をとって翌日に挑むことにした。
■本番当日
【不穏な朝】
朝は予定通りに起床する。朝ごはんはフルグラにインスタントオーツをかけてmgmg。
朝ごはんを食べながら軽くストレッチをしながら天気予報を見ていると、不穏な気配が。
テレビの天気予報:曇りのち雨
おい!直前まで晴れ予報だったがや!!
しかしYahoo天気も1時間予報含めて晴れの予報だぞ?どうなっとる??
やめておくべきか、実行するべきか…。
そんなこんなで悩んでいたら出発時刻が遅れてしまった。
悩みだすと決断ができない。自分の悪いところである。
まだ真っ暗の中家を後にし、現地に向かう。
マックスバリュで買い物をして、西田橋のスタート地点に立ったのは7時前。
徐々に明るくなってくる時間帯で、約1時間のスタート遅れ。
大丈夫だ、十分問題ない時間である。
さて、始めますか。
— まさやん (@saibaiman1002) January 15, 2021
雲行き怪しいから雨降ったらやめます。 pic.twitter.com/tu2GZhbjaV
【幸先のいいスタート】
1本目はバックパックに荷物を背負ってのスタート。
当然無理をしないように淡々と上る。1本目は15分ちょっとで上れた。
1本目を終えた後は、荷物を置いて下る。
ちなみに荷物はこの後別のタイミングで職員さんに一言声をかけ、
・今日だけ置いてある点
・管理は自己責任なので何があっても自分の責任
である点をお伝えしている。
置いてあり忘れ物やゴミではない点だけお知らせする形だ。
置いてあり忘れ物やゴミではない点だけお知らせする形だ。
1本下って荷物置く作業を含めても30分程度。想定通りだ。
その後は自分の脚のコンディションを確かめながら、決して踏みすぎないように、でも遅くなりすぎない範囲で走行。
イメージとしては、緩斜面はシッティングの180-200Wでのんびりゆるゆると。少し勾配がきつくなるところでは「体重に任せた休むダンシング」で走る。
(ちなみに身長170cm、体重67㎏、FTPは303Wである)
全体的に心拍も有酸素運動レベルでそれ以上は上げず、決して息は切らさない。
体力もできるだけ温存する走りだ。
なんせ距離も300㎞以上ある。
単純に計算して吹田の家から名古屋の実家の往復するくらいの距離はある。
吹田から白川郷にも行ける。
単純に計算して吹田の家から名古屋の実家の往復するくらいの距離はある。
吹田から白川郷にも行ける。
そんな距離を走るのだから、ツーリングレベルのペーシングが必要。
のんびり行けばいいのだ。
と、サクッと6本が完了し、時刻は9時15分。
最初の1本のロスを考えると、想定よりは早い時間である。いいペースだ。
最初の1本のロスを考えると、想定よりは早い時間である。いいペースだ。
最初の休憩は予定通りおにぎり・団子・パンをmgmg。胃袋の6分目くらいでちょうどいい。
サクッと補給を終えて、次なる6本へと進んだ。
【暗雲の2周目】
7本目の下り途中で声をかけられる。
誰だかよくわからなかったけれど、チタンロードに乗っている細身の人だった。
7本目の上り途中から、雨がポツポツと振り出す。徐々に強くなる。
…嫌な予感がする。
とりあえずサクッと上ったところで、先ほどのチタンロードの人が僕の写真を撮っている。
ふつうに雨降っとる
— もつなべ (@motunabe888) January 16, 2021
この中エベレスティングは無理だって pic.twitter.com/3U5X422hpr
もつなべさんでした。
応援ありがとうございました!!!
もつなべさんと軽く会話をしながら下る。
雨は降っており路面はウェットになるものの、ディスクブレーキだから特にブレーキタッチには変化がない。
この辺はディスクブレーキで良かったと本当に思う点である。こういう天候の際に、心理的負担が少ない。
1本下ったところでもつなべさんと別れ、自分は上り返す。
雨脚は落ち着き、晴れ間が見えるようになる。
しかしそれでも5分前には明るかった空が5分後に暗くなるなど、天気は安定しない。
8回目の下る途中で、友人とライドをしている嫁とスライドする。
その後に9本目を上る途中で、急に風が出てきた。突風のような風だ。
嫌な予感がする。この1本は少し早めに上ろう。14分台で上りきる。
嫁と合流したその直後、急に振り出す雨。そのまま一気に強くなる。
土砂降り pic.twitter.com/IqmzR2JCm2
— まさやん (@saibaiman1002) January 16, 2021
「あー…ダメな奴だこれ」「もうめちゃくちゃだよコレ。。。」
吹き荒れる風、雨粒がはっきりわかるほど降りしきる雨。
完全に中断を余儀なくされた。
おいー…天気予報こんなん聞いてねえぞ。朝の天気予報でも晴れの予報だったろう。
さっきの休憩の時点でも雨予報にはなっていなかったじゃんか、信じてたんだぞ。
そうやってYahoo天気を開くと
「今降ってます」
おめえは名古屋走りのウインカーか!!!
降ってから急に天気予報変えてんじゃねえぞ!
降ってから急に天気予報変えてんじゃねえぞ!
雨雲レーダーを見つつ、1時間後の状況ではやんでいる予報なので、それを信じていったんは雨宿りして休むことにした。
こんなはずでは…。
約1時間後、雨は止み再度走り出すも、路面はかなりウェット。
どうしても水跳ねでウェアは濡れ、シューズカバーも湿る状態である。
この状況は…まずい。
温暖な時期であれば雨が降れば「濡れるだけ」といえるけれど、寒冷なこの時期では体力を奪い命の危険すらある。
あまり望ましい状況ではなかった。中止が頭をよぎる。
それでも淡々とペースを刻み、12本、15本と上っていく。
当初の予定とは異なるが、前回の休憩である9本目から6本上った15本の段階でもう一度休憩。
ここでは予定とは少し異なるがおにぎり・パンをmgmg。体力を回復する。
空は依然として暗い。時折雨も降っている。
外の暗さが14時のそれじゃねえな pic.twitter.com/RrfIjZkR14
— まさやん (@saibaiman1002) January 16, 2021
天気予報も、さっきまで14時台は晴れ予報だったのに雨降っていることになっている。
この時点で半分を完了していないのは、非常にまずい。
中止することも頭に入れながらの走行を続けることにした。
15/36
— まさやん (@saibaiman1002) January 16, 2021
雨での1時間中断と、その後も小雨続き、もう一度は降りそうな点もあるからハーフ打ち切り濃厚かなー。
タイムは一定で上りはのんびり淡々と15分キープ。 pic.twitter.com/cwVGHMxtkd
その後中止するか続けるかどうかを悩みながらも淡々と上り下りを繰り返す。
NOVA君ともたまたまスライドして一緒に登ったりして21本を完了。
NOVA君ともたまたまスライドして一緒に登ったりして21本を完了。
ペースはほぼほぼ15分前後を安定して出している。
あと15本で36本、そこから+1本。体力にはまだまだ全然余裕がある。
走行距離は180㎞を超えたが、全然問題ない。
しかし、現在時刻は17時。今から考えると、順調にいっても8-9時間は必要。
現在10時間経過。日没。ここからはナイトライドである…。
というところで、この日のコンディションと状態を考慮してやーーめた!!!
うん、やめとこ!終了!
— まさやん (@saibaiman1002) January 16, 2021
撤収! pic.twitter.com/ndykoYAxke
ここまでやったんだから達成したいという気持ちはあれど、中止を決断。
体力もあるしまだまだやれるし悩みに悩んだけれども、勇気ある撤退。
・予定よりナイトライドの時間が長くなることで精神的負担が増える
・既に朝早い段階からの雨で体は冷えており、ここから天候により暖まることは絶対にない(むしろ100%下がる)
・路面がウェットなので、真っ暗闇では明るいうちほどのコンディション把握が追い付かないかもしれない
⇒自分の考えている以上に体力や精神面にダメージがあり安全性に影響が及ぶかもしれない
いろんなことを考えたけれど、やめることにしました。
応援してくれた人や見に来てくれた人には申し訳ない・・・
(自分でもこういうチャレンジものの初断念なので割と悔しい)
まあでも、怪我したら元も子もないし、これ以上やっても色々きついだけなので終了!!
安全に家に帰る、ダメになりそうなときそれが一番大事!!
■リザルト
降りる前に取った記録はこちら。帰宅後、天気予報をもう一度見てみると…
降っとった時間の天気が晴れや曇りになっとる…
お前らは民主党政権か!!
自分のやってきたことをなかったことにするなんてなんて奴らだ…。
本当に今回は天気に振り回されたなあと感じた。
総じて今回は「日程の選択する能力」が圧倒的に足りなかったかな。
まあ思い付きで前日に決めたし、仕方がないともいえるけれど。
まあ思い付きで前日に決めたし、仕方がないともいえるけれど。
季節と時間の関係からプランニングとコース選択もダメだったかな。
勝尾寺の下りは真っ暗。もう少し明るければ問題ないけれど、この暗さは精神を削る。
この辺りから考えてもダメだったプランなんだろうな。
勝尾寺の下りは真っ暗。もう少し明るければ問題ないけれど、この暗さは精神を削る。
この辺りから考えてもダメだったプランなんだろうな。
というわけで昨年1度もやらなかった200㎞オーバーをいきなりこんな形でやってしまいましたとさ。
次回チャレンジするとしたら、このコースなら5月くらいが今回のやり方では一番適しているかなと思う。
早朝5時くらいからスタートして明るくなるころに1本目の下り、30本くらいで日没、残り1-2本をナイトライドくらいのイメージでできれば理想じゃないかしら。
まあ、もうやんないけどね!!!!
ぶっちゃけ物理的難易度で考えれば信号もないところ選べばいいし、キャノンボールよりは難易度は低いと思う。
けれど精神的なダメージや飽きとかそういう面で考えると、エベレスティングは「苦行」に近い印象。
というわけでもうやりたくないでーす。
エベレスティング思い付きチャレンジ 完!!
■後日談~洗車便利グッズ~
後日、ドロドロになった愛車の洗車をしたけれど、今回新しく導入したこのツールが大活躍。BBBのディスクブレーキのメンテナンスパーツだけれども、これがスルーアクスルの軸にそのままはまるので洗車で超使いやすい。
クイックレバー時代はダミーアクスル&テンショナーは各社販売していたけれど、スルーアクスルになってからはほとんど見かけなかった。
これならアクスルはそのまま使用することで、各社のフレームでも使用できるから安心だ。
自分で洗車する派の人は、是非検討するといいと思う。
コメント